月刊 世界のチーズ
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2021.07.15
Vol.10 Barrel Aged FETA(樽熟フェタ) |
●Barrel Aged FETA 樽熟フェタ ■フェタチーズは羊乳のみ、または70%以上の羊乳と山羊乳のブレンドから作られるギリシャのチーズです。地中海の温暖な気候と太陽、生物の多様性、そして土地特有のユニークな植物相が起源原材料となるミルクの生産に理想的にはたらきかけ、他に類を見ない独特のフレーバーを生み出します。この白い塩漬けチーズはギリシャのフラッグシップ的な製品としてPDO認定を受けており、歴史と習慣に直接結びついてギリシャの美と健康を支える食文化そのものと言えます。 ※Feta(フェタ)という名前はイタリア語のスライス(fetta:フェッタ)に由来する ■原料乳:羊乳85%、山羊乳15%(どちらも殺菌乳) ※PDOフェタの規定では山羊乳の混合比率は最大30%まで ■固形分中乳脂肪:43% ■熟成期間:最低2ヶ月(~15日@18℃以下、16日以降@2〜4℃、相対湿度約85%) ■大きさ・形:不定(カットされた状態で22kg容のオーク樽で熟成) ■原産地:ギリシャ、テッサリア西部カルディツァ県 |
RECOMMENDED |
Barrel Aged FETA(樽熟フェタ)を存分にお楽しみいただくためのオススメのパートナー |
Greek Salad |
フェタはギリシャの食卓には欠かせない食材で、一日を通して目にしない日はないでしょう。その最もポピュラーな楽しみ方は何と言ってもグリークサラダです。 |
グリークサラダのレシピはお店や家庭によっていろいろですが、基本的に欠かせないのは・・ |
Feta Alchemy |
フェタは外皮のない真っ白な生地という外観からフレッシュタイプのようにも見えますが、実際にはカードを乾塩で塩漬けし最低2ヶ月熟成させることで、「tangy(テニィ)」と表現される特徴的な風味(※1)が生み出される熟成タイプのチーズです。漬物と同じようにカード自体から排出されるホエーが塩水となってそれに漬け込まれたような状態となります。このため生地が比較的硬く、水分が抜けてクランブル状に仕上がります。 |
※1)tangy(テニィ、タニィ、タンジー または タンギー とも)「tangy」という表現を日本語で説明するのはやや難しいですが、とりわけブルーチーズや熟成した山羊のチーズに感じられる「ピリッ」とした力強い味わいのことを表現しており、しばしば熟成によって醸し出される力強い味わいのことを指します。 |
原料乳は搾乳後48時間以内に処理され、液体(または粉末)のレンネットを加えて撹拌。 カッティングされて型に詰められます。 |
型詰めされたフェタは多段式のバットに重ねられ、機械でまとめて反転(脱水)作業が行われます。この時点から熟成期間がカウントされます。 |
※塩漬けする際の塩の量はチーズ重量の3% ※フェタチーズの熟成方法には1)特殊な金属槽で行うものと2)木製(樺またはブナ)の樽で行う方法があり、熟成期間はどちらも最低2ヶ月です。 |
フェタの熟成は二段階で行われます。 ■1st stage:18℃、相対湿度85% 最大15日間(季節によって変動) |
■2nd stage:2~4℃、相対湿度85% 1st stageと合わせて最低2ヶ月 |
熟成後はそれぞれ缶詰、プラスチック包装されて(樽の場合もある)出荷されます |
What’s the history of Feta? |
紀元前8世紀末の吟遊詩人ホメーロスの叙事詩『オデュッセイア』によると、海の神ポセイドンの息子であるサイクロプス族のポリュペーモスは、3,000年前、世界中で知られている最初のチーズ「フェタ」を作ったとされています。羊のミルクを毎日洞窟に運んでいると、数日後にミルクが発酵して固まりとても美味しく食べられるようになることを発見したそうです。 |
フェタチーズは古代ギリシャ人の食事に欠かすことのできない食材でした。 時を経ても変わらないそのユニークな特徴は世代から世代へと受け継がれ、地元の文化遺産の象徴であり地中海料理の代名詞となっています。 |
The Geographical Area |
フェタPDOの生産地域は、ギリシャのメインランドと呼ばれるギリシャ本土全体:マケドニア(Macedonia)、トラキア( Thrace)、イピロス( Epirus)、テッサリア(Thessaly)、中央ギリシャ(Central Greece、アッティカ;Atticaを含む)、ペロポネソス(Peloponnesus) およびレスボス島(Lesvos)、リムノス島またはレムノス島(Limnos / Lemnos)、 アイオス・エフストラティオス島(Agios Efstratios)といった北エーゲ地方の3つの島が含まれており、ギリシャの北側領域で作られています。 これにはクレタ島(Crete)を筆頭にスポラデス諸島(Sporades)、キクラデス諸島(Cyclades)、ドデカネス諸島(Dodecanese)およびイオニア諸島(Ionian Islands)といった島々が含まれていません。 |
これらの地域はPDOで指定されており、ギリシャ全土でないのには理由があります。 フェタがPDOの認証を受けた背景として、その品質が地理的特異性と深く結びついていることが主張されており、「フェタの製造に使用される原料乳は、伝統的な方法で飼育され製造地域に適合した羊と山羊から搾乳したものでなければならず、その地域の植生を基礎とした牧畜が行われなければならない」と定義されています。 地形学的には山岳または半山岳地帯であること。 気候については、穏やかな冬、暑い夏、そして多くの日照に恵まれていること、 中央バルカン山脈の典型的な植生であることが条件として挙げられています。これらの要因はその地域が隣接する他の地域から明瞭に区別する自然の特徴を持っていることを主張しています。ギリシャ環境省によるとギリシャには5,500種以上の植物相が記録されており、そのうち約1,000種が固有種で、さらに700種以上はギリシャでしか見られないとも言われています。 |
Chios Sheep |
フェタの原料となる羊乳については「指定地域で繁殖・飼育された羊」としか定義が見当たりませんが、ギリシャ国内で広く飼育されている羊のひとつにキオス羊が挙げられます。 |
【 特徴 】 |
The Feta War |
フェタはそのPDO認証において10年以上にわたって国際法廷闘争を引き起こした唯一のチーズであり、最も物議を醸したチーズと言っても過言ではないでしょう。これまで解説してきた通りフェタは本来ギリシャで羊乳、または羊と山羊の混合乳から作られるカード(凝乳)を塩漬けした白いチーズですが、近隣のトルコやデンマーク、カナダ等で作られる同等のチーズ(多くは牛乳製)も「フェタ」と呼ばれてきました。 1989年以来、ギリシャはEUに対し他の加盟国が白い羊乳チーズに「フェタ」のラベルを付けることを禁止するよう要請してきました。 ■1992年 EUは特定の食品に対して少なくともEU内では食品の地理的呼称を保護できる制度を確立。 ■1994年 ギリシャはフェタチーズをPDOで保護するよう要求。この要求は1996年に欧州委員会によって承認。しかしこの決定はデンマーク、ドイツおよびフランスからの不承認要求に晒されます。とりわけデンマークはEU内では年間約30トンを生産するギリシャに次ぐ「フェタチーズ」の生産国であり、この非難において最も声高でした。彼らは「フェタ」という言葉そのものはイタリア語で「スライス」を意味する「fetta(フェッタ)」に由来しており、原語としてギリシャに伝わったのは17世紀と主張。さらに「フェタ」という名称そのものはギリシャだけでなくバルカンおよび中東の他の国々でも使われてきた一般的な名称であると反論。 ■1999年 EUは先のPDO認証を撤回。論争を解決するために「フェタ」という言葉がヨーロッパ人の深層心理でギリシャと関連しているかどうかを判断するための調査を実施(「フェタ」という表示がギリシャを想起させるかどうかの市場調査)。さらにギリシャの乳製品省は彼らの立場を擁護するため、その根拠となる情報を準備し始めました。 ■2002年 EUのGI制度によって、「フェタ」の名称がギリシャPDOであることが認定 最終的に「フェタ」はギリシャ語以外の何物でもないとされています。 ■2013年には非PDO製品に「フェタ」名称の使用禁止が決定 5年の猶予期間を経てギリシャ以外にフェタを名乗ることができなくなっています。 (2013年以前に商品化されたカナダ製品についてのみ、「フェタスタイル」を名乗ることが許されている) これを受けてそれまで「フェタ」として販売されていた製品(デンマーク産、牛乳製等)についてフェタの名称が使用できなくなり、「フェタキューブ」→「ホワイトキューブ」等に変更されています。 |